製造業の検査などで用いられる画像処理技術は、最終的に出力するのは、対象物の位置や寸法といった“その画像の特性”です。
1.工業用画像処理の種類
QRコードに代表される2次元バーコードや一般的なバーコードは、製造現場でよく使われており、部品のトレーサビリティー(追跡)に役立てられています。このような製造現場では、対象物に直接コードを刻印する場合が多いのですが油で汚れたり、かすれた状態になったり、そもそもコードが曲面に刻印されていたりと、非常に悪条件にあります。このような過酷な条件下においても、コードを正確に読み取れる性能が求められます。
半導体製造工程では、古くから画像処理を使って対象物の位置を計測して加工したり、パターンの検査を行ったりしています。電気・電子製品の組み立てでも画像処理が使われています。プリント基板に小さな部品を隙間なく張り付ける技術は、画像処理なしには実現できません。
自動車産業では、部品の寸法計測や不良品判定、組み立て、2次元コード読み取りなど、幅広い用途で使われます。特に、エンジンやステアリング系は安全に関わる重要な部品ですので、画像処理で念入りに検査されます。
2.画像処理で何ができるのか
画像処理で何ができるのかを説明する際、「GIGI」というキーワードをよく用います。これは「Guidance(ガイダンス)」「Inspection(インスペクション)」「Gauge(ゲージ)」「Indentify(アイデンティファイ)」の頭文字を並べたものです。
G:Guidance(ガイダンス)
「G」は“Guidance”の頭文字で、何かを「ガイドする」という意味を持ちます。例えば画像処理がロボットの目として機能し、ロボットハンドの動作をガイドするということです。
I:Inspection(インスペクション)
「I」は“Inspection”の頭文字で、日本語でいう「検査」です。生産ラインで検査を行って不良品を排除することは、顧客満足度や企業価値の向上につながる極めて重要な活動です。
G:Gauge(ゲージ)
もう1つの「G」は“Gauge”、すなわち「寸法」の計測です。製造工程を管理する上で、生産品の寸法をチェックすることは不良品を出さないことに役立つのはもちろんのこと、製造工程の状況を把握する上でも重要です。
I:Indentify(アイデンティファイ)
「I」は“Indentify”、日本語の「認識」ですが、ひらたく言うとバーコード/2次元コード/文字の読み取りのことを指します。これらを読み取ることによって、どの製品が、いつ・どこの機械で加工されたかが把握でき、生産ラインを管理することが可能です。
3.画像処理に関わる代表的な要素
画像処理に欠かせない要素として、「照明」「レンズ」「カメラ」などが挙げられます。
@照明
対象物を“見る”ためには、照明を当てる必要があります。また、その対象物の何を見たいかによって、照明を工夫しなければなりません。例えば、対象物の輪郭を見たいのであれば背後から当てる透過照明が適していますし、対象物のキズを検出したいのであれば斜め急角度で当てる暗視野照明がよいでしょう。さらに、照明の色を適切に選ぶことも特定の特徴を抽出するのに役立ちます。
Aレンズ
どれくらいの倍率で対象物を撮影したいのか、カメラと対象物との距離がどれくらいなのかによって、使用するレンズを選択します。レンズはその歪み(ひずみ)特性や明るさ、解像度によって価格が大きく変わってきます。対象物のキズの有無検出であれば、あまり歪み収差にはこだわらなくても大丈夫ですが、寸法計測であれば、ある程度考慮する必要があります。
Bカメラ
カメラは、光を電気信号に変える重要なユニットです。画素数や撮影スピード、インタフェースの種類によりさまざまな機種が販売されています。対象物の細かな特徴を捉えたい場合は画素数の多いカメラを用います。高速な処理が要求される場合には撮影スピードが速いカメラを選択します。
4.画像処理はどのように行われるのか
照明、レンズ、カメラを通して、画像情報がコンピュータに入力され、その画像に対して画像処理が施されます。
@フィルタ処理
多くの場合、最初のステップとしてフィルター処理を行って、注目したい特徴を浮き上がらせます。フィルター処理には非常に多くの種類があります。大ざっぱに分類すると、ノイズを除去するもの、対象物のエッジを強調するもの、明るさやコントラストを変えるもの、画像を変形させるものなどがあります。
A画像処理ソフトウエアの選定
ソフトウェア品質やサポートがしっかりしており、相談にのってくれるような体制を備えたメーカーから購入すべきです。
また、ソフトウェアの「使いやすさ」も重要なポイントです。生産現場は時間(スピード)が勝負です。さっさと画像処理装置を立ち上げて生産を開始し、段取り替えも容易で、トラブルが少なく、万一トラブルがあったとしても早急に対応できる使いやすい製品を選定すべきです。
使いやすさを実現する上で、大きく2つのポイントがあります。1つは、当然ですが「操作がしやすいこと」です。もう1つは「画像処理アルゴリズムの性能が優れていること」です。画像処理の性能が優れていれば、使用者の手を煩わせることもないので、結果「使いやすい」と感じることになります。もちろん、これは人件費の削減にも貢献することになります。
★コグネックス社のサイト://www.cognex.com/
posted by swift1 at 19:11|
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