について書いてみたいと思います。
私が設計をしていたころは、ドラフターで、紙の上に鉛筆で書いて、消しゴム
で消しながらまた鉛筆をなぞって図面が真っ黒になるまでを書いたものです。
設計も2次元CADに変わり「もう消しゴムで線を消さなくて済む」ようになった
時は画期的でしたが、すでに私は具体的な設計作業からは離れていました。
1990年代に入るとPro/ENGINEERなどのツールを用いて3Dで設計を行うよう
になりました。2Dだけの時代に比べて干渉チェックなどにより、設計ミスが
大幅に減り、設計品質が向上しました。設計期間の短縮や、標準化設計による
コストダウンの検討も設計段階から検討できるようになりました。
私は設計スキルを高めるために、多くの設計を経験したいと考えていました。
また、部品の加工や組立および試作トライなどに立ち会い現場で自分が設計
した製品を実際に見て、各工程の技術者や職人さんの話や考えを聞きながら
自分の設計思想について話をすることも常に行っていました。
それにより色々なことが吸収でき、自身の設計スキル向上に繋がったと自負
しています。
また、過去の実績を整理するツールも乏しかったため、部内や工場を駆けずり
回ってデータを収集したりもしていました。
こうして集めたデータをもとに新たな設計を行い、良いものができた時は現場
の方々からの信頼にも繋がってきたと感じています。
つまり、1人の知識や経験が少なくても技術者同士のコミュニケーションを通
じて情報しっかり集め、議論し、自分なりに納得することによってスキルを
磨くことができる訳です。
ツールが整備され、完ぺきな図面は机上で作成できるようになりました。
新興国でも、ツールさえあれば同じレベルの図面は容易に作成できるように
なりました。
しかし、国際間競争にさらされている多くの日本の企業では、図面からは
読み取ることが困難な様々な知識や情報を有効に活用しきれていない、
また継承されていないのが現状ではないでしょうか。
例えば、中国に代表される新興国の金型メーカーの急速な技術力の向上と
圧倒的なコスト競争力に対して、日本で金型を作り続ける金型メーカーには
一層の高品質、短納期、コストダウンが要求されています。
それらを実現するためには、自身の過去の経験(成功事例や不具合対策事例)
だけでなく、他の設計者が得た経験をも共有し活かせる体制や仕組みづくり
が必要です。
一般的に熟練技術者は若手に技術やノウハウを教えることを嫌い伝え方が不得手
であることが多いと言われます。私自身、後継者を育てたい想いはあっても、
自分1人の力で判り易く伝えることは難しかったと実感しています。
しかし、会社組織の中では事業の成長や拡大のために若手に技術やノウハウを
伝承しスループットを上げていくことが必要となっていると思います。
それに加え、益々より高度な顧客要求への対応も必要となってきており、より
精度を求めて、新しい素材を用いた金型への要求など、自社だけでは対応でき
ない新技術への対応も必要になっています。
視野をもっと広げ、幅広く協力金型メーカーの協力を得て、熟練技術者と知恵
を絞りながら取り組む、技術強力、技術提携することも必要です。
ツールは近代化されても、設計の考え方は不変だと思います。
ただ、スピードと、より視野を広げた対応が、今の技術者には求められている
と思います。